研究概要 |
コンベンショナル環境で飼育したスナネズミ(TUM系,10週齢,雄)にコレステロール(0.2%),コール酸(0.04%),オリーブ油(1.0%)を添加した固形資料(CE2;オリエンタル酵母)を連日与えたところ,体重は投与約10週までは上昇したが,以降は飼料摂取量の緩やかな減少とともに変化がなかった。血清コレステロール値は投与20週で最高値(450mg/dl)を示したものの,その前後では170〜350mg/dl以内にとどまった。肝の腫大は軽度であったが投与期間中黄色〜灰白色を呈し,投与10週で中心静脈周囲に限局性脂肪変異が発現した。この脂肪化域のほぼ中心に投与20週で,細胞質に乏しくα-SMA陽性の星型細胞の増殖巣を認めた。電顕では中心静脈周囲での伊東細胞の突起の伸長像,微細線放出像を認め,類洞内にはKupffer細胞も多く認めた。これらの細胞増殖巣は投与30週ではやや拡大し,一部は空胞化,細胞質はMassonトリクロム染色(MTC)で淡青染,α-SMA強陽性を示し,微細好銀細網線維が介在していた。電顕ではコラーゲン線維を放出する伊東細胞が多数認められ,多量の線維が細胞周囲に集積していた。投与40週では,肝組織の一部が横隔膜に癒着し,増植細胞巣の空洞化はさらに広汎におよび,門脈枝に接して境界明瞭な壊死巣が多数発現したが,α-SMA抗原の分布はび漫性であった。この段階では,壊死巣はMTCで濃青染され,壊死巣を囲む好銀線維が認められた。投与50週では空胞化は肝全域におよび,白色結節性壊死巣数個をみとめ,壊死組織周囲ではコラーゲン線維の伸長が認められた。 以上のように,コレステロール投与スナネズミにおける肝線維化は中心静脈周囲から起こり,その進展には伊東細胞が主に関与しており,線維芽細胞の役割はそれほど大きくないと思われた。またKupffer細胞増生後に伊東細胞の増生をみたことから,伊東細胞の反応はKupffer細胞からのTGF-β1放出に対応するものである可能性が示唆された。
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