クルマエビのゾエア幼生から分離された1株(A株)、およびヨシエビの卵とミシス幼生から分離された2株(B株、C株)について詳細にその性状を検討した。菌の分離は菌の感染が確認された卵および幼生をPYGS寒天培地に接種し、細菌の発育を抑制するために抗生物質を散布し、25°Cで培養する方法で行った。同定は主にKarling(1981)に従って行った。全ての分離菌は海水中で明瞭なfrafmentを形成し、その内部に遊走子が形成されたことからHaliphthoros属に分類された。A株とB株はHaliphthoros milfordensis vishniacに同定された。C株は1mmに達する程の極めて長い放出管を形成することが特徴で、しかも菌糸の径が比較的不規則であった。このような特徴は既知のHaliphthoros属の菌種とは明らかに異なった。またC株の発育は他の2株より遅く、しかも人工海水の代わりにKClで作製した培地には発達しなかった。このことからC株はHaliphthoros属の新種であると判断し、H.hiroshimaensisと命名した。各株の発育適温試験を5、10、15、20、25、30、35°Cで行った結果、AおよびB株は30-35°Cで、またC株は35°Cで最も良好な発育を示した。これらの結果は、本病が水温の高い夏期に流行することと一致していて興味が深い。いっぽう、クルマエビおよびヨシエビ幼生から分離された他の形状を示す各1株づつの菌の分類上の位置を検討した結果、両菌株ともにHalocrusticida属の菌に分類され、1株はH.panulirataに、また他の1株はH.parasiticaに同定された。これらの菌は集落が大きくならず、また、ゲンマを形成することが特徴であった。
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