平成6年産の大正金時と小豆を5種類の飽和塩溶液を入れたデシケータ内に保持し、吸湿、脱湿に関連する平衡水分を20℃の恒温室で60〜100日間測定した。その結果、平衡水分に達するために、小豆は80〜100日、大正金時では60〜70日を要し、両試料とも脱湿の平衡水分が吸湿のそれよりも高くなる履歴効果が認められた。 平成7年産の小豆を飽和食塩水(ポ-メ度 33〜35)で比重選別し、"かた豆"と健全粒を得た。20℃24時間における吸水率は"かた豆"で89.73%、健全粒で103.3%と"かた豆"が吸水能の低いことが統計的に明らかになった。小豆の場合は種瘤から吸湿が大部分であるとの知見がみられるので、種皮の種瘤部とその周辺部位を走査型電子顕微鏡写真で観察した。その結果、健全粒と"かた豆"の種瘤部位の構造に顕著な差異が認められ、これが吸水速度に影響を与えているものと判断した。 近赤外分光光度計サンプルトランスポートモジュールを用いて、平成7年産の小豆の健全粒と"かた豆"の吸光度を400〜2200nmの可視域から近赤外域までのスペクトルを測定し、さらにそれらの2次微分スペクトルを求めた。1134〜2200nmの2次微分スペクトルのデータをIQスクエア・ソフトウエアで解析し、健全粒と"かた豆"のライブラリーを作成した。次に、未知試料のスペクトルを取り、スペクトラルマッチングと主成分分析を行った結果、近赤外分析によって健全粒と"かた豆"の非破壊判別が可能であることを明らかにした。
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