無水マレイン化オレイン酸無水物(MAMO)あるいはドデセニルコハク酸無水物(DDSA)とセルロースジアセテート(CDA)とを、160-200℃で約10-20分間、混練することにより、CDAは効果的に可塑化された。前者との対比で、マレイン化していないオレイン酸メチルと同等の条件下で混練したところ、CDAの可塑化はほとんど進まなかった。このことは、MAMOの場合、付加している無水マレイン酸基がCDAの残存水酸基とエステル化すること、その結果として生じる内部可塑化により、CDAの可塑化が大きく進むことを示している。 一方、可塑剤の含有率が高い時には、溶融粘性が低く加工性に優れたシートが得られたが、時間が経過すると可塑剤が表面に析出するという問題が起こった。逆に、可塑剤の含有率が低いと、引張強度およびヤング率の大きいシートが得られたが、粘度が高く成形が困難であった。こうした問題を解決するために数種の添加剤を加えた結果、かなりの改善が見られることが知られた。可塑剤の析出を抑制するためにコーンスターチもしくはエポキシ化合物を加えたが、これらの添加によってある程度までは析出を制御することができた。粘度を下げるために加えたε-カプロラクトン(ε-CL)は、材料の加工性を大幅に向上させた。すなわち、引張強度に多少の減少は見られたものの、成形物に柔軟性、可とう性を広範囲に与え、可塑剤の析出も起こさなかった。 土中埋没試験の結果、この種の材料のシート状試片で、ある程度の有為な生分解が起こり得ることが知られた。
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