研究課題/領域番号 |
07660436
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平井 諒子 京都大学, 化学研究所, 教務職員 (20156623)
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研究分担者 |
辻 正樹 京都大学, 化学研究所, 助教授 (60172003)
堀井 文敬 京都大学, 化学研究所, 教授 (70124758)
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キーワード | バクテリアセルロース / セルロースI_α / セルロースI_β / 透過型電子顕微鏡 / 電子回折 / アルカリ水溶液 |
研究概要 |
本研究は、バクテリアセルロースを用いて、複合結晶の生成機構、高次構造形成過程を明らかにすることを目的とする。以下に今年度得られた知見を記す。 1.前年度に引き続き種々の条件下での酢酸菌の培養を試みた結果、菌株による差が明らかとなった。smooth colonyの場合、4℃で培養すると帯状セルロースが生成し、その結晶構造はセルロースIIであることが電子回折により明らかとなった。また4℃で培養後28℃で培養すると、帯状セルロースに続いてセルロースIの結晶構造を示すリボン状セルロースが生成した。同じ酢酸菌が培養温度に依存してセルロースIまたはIIを生成することが分かった。 2.細胞内の各合成サイトから押し出されてきたセルロース分子鎖は、初期段階では非晶状態であるといわれている。酢酸菌をグルコース含有リン酸バッファー中にて、28℃で5分、30分および24時間培養した。次に各培養液に種々の濃度のNaOH水溶液を添加し、30分後、酢酸中和、透析してセルロースを得た。得られたセルロースを電子顕微鏡用グリッドに載せて形態変化を観察した。24時間培養して得たセルロースは、1%のNaOHでは、形態変化を示さなかったが、30分間培養した場合には、形態変化が見られた。このことは、培養初期に生成するセルロースは、非晶状態であるため低濃度のアルカリによる影響をうけたものと推定される。現在は、さらに詳細に検討するために、グリッド上での培養を試みている。 3.高分解能電子顕微鏡に、高感度・高解像度のテレビカメラを接続し、極めて弱い電子線照射下で試料を探し、電子回折を行った。標準培養条件下で生成した60〜80nm幅の一本のセルロースフィブリルの場合、セルロースI_αに基づく回折点が認められた。 4.以上の実験結果および前年度の結果から、I_αおよびI_βの複合結晶形成機構を提案した。
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