研究概要 |
エンドウ種子抽出液から,ゲルろ過,イオン交換クロマト,疎水クロマトによりEndo-β-N-acetylglucosaminidase(Endo-PS)の精製を行った。精製酵素はSDS電気泳動的,質量分析的に単一であり,その分子量はMALDI-TOF MS分析により41,669Da,等電点は4.3であった。Endo-PSはpH4-7の範囲で,25-50°Cの範囲で安定であり,Man6GlcNAc2-PAを基質とした場合の至適pHは7.0であった。Endo-PSはオリゴマンノース型糖鎖(Man9-5Glc2-PA),及びハイブリッド型糖鎖(GlcNAc1Man5GlcNAc2-PA)に強い活性(加水分解率60%以上)を示し,Man3GlcNAc2-PA及びGlcNAc2Man3GlcNAc2-PAには若干の活性(加水分解率25%)を示したが,キシロース結合型或いはバイアンテナ複合型糖鎖には活性を示さなかった。また,本酵素のMan9GlcNAc2-PA,Man6GlcNAc2-PA及びMan5GlcNAc2-PAに対するKm値は,各々0.32mM,0.25mM,0.40mMであった。現在はEndo-PSのアモノ酸配列決定を進めている。更に,Endo-PSの生物学的意義解明の一端として,エンドウ種子貯蔵糖蛋白質中における内在性基質存在の有無の確認を行った。その結果,エンドウ種子貯蔵糖蛋白質にはオリゴマンノース型糖鎖(70%;Man8-3GlcNAc2)及びキシロース結合型糖鎖(30%;Man3-4Xyl1GlcNAc2,Man3Fuc1Xyl1GlcNAc2)が結合することが明らかとなり,エンドウ種子中におけるEndo-PSの内在性基質の存在を明らかにした。この結果は,種子発芽期におけるEndo-PSの貯蔵糖蛋白質代謝への重要な関与を示唆するものであった。
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