日本産Agrobacterium rhizogenes MAFF301724株が保有するpRi1724 rolB遺伝子(1724rolB)のオーキシン化合物による転写制御に関する研究を行った。始めに、pRi1724 T-DNAのright borderを決定し、新規ORFXを発見し、その転写を確認した。次に、pRi1724のcore T-DNAの存在する不定根分化遺伝子群の転写状況をnorthern blottingおよびRT-PCR法を用いて解析し、全てのORFの転写を確認した。さらに、1724rolBプロモータのオーキシン化合物による転写活性化をアジュガ毛状根で調べたところ、オーキシン添加6時間以内に転写の促進が起こり、12時間目までにはピークに達することが分かった。1724rolB遺伝子から上流役1200bpのDNA断片を単離し、GUS遺伝子の上流に繋いでタバコ毛状根に導入し、そのGUS活性を測定した。その結果、この領域にプロモータ活性があることが確認されたが、その活性はCaMV35Sプロモータに比較すると10分の1程度であった。発現部位を組織化学的なGUS染色で調べたところ、根の表皮と根毛部分での発現が見られた。GUS遺伝子の上流に繋いだ1724rolBプロモータ領域を上流から順次deletionし、これを導入したタバコ毛状根内でのプロモータ活性を調べた。プロモータ活性は986-678bpで急激に減少し、この位置に転写活性化領域があると考えられた。オーキシンでの転写活性化は678-540bpで消失したので、この領域にオーキシンに反応する領域、すなわちシス因子の存在が示唆された。一方、他の研究者により、pRiA4のrolB遺伝子プロモータ内でオーキシンにより活性化されるシス因子(ACTTTA)を含む配列が見いだされている。そこで、現在、これと相同な1724rolBプロモータ内の配列を用い、Yeast One-Hybrid法によってタバコcDNAライブラリーからこの配列に結合するトランス因子の単離を試みている。
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