ショウジョウバエの6-2と命名したアルドラーゼcDNAは229番目の活性中心リジンがグルタミンに置換していた。このmRNAはショウジョウバエの成虫で発現しているので、これを大腸菌の発現系でタンパク質を作製し、解析を行った。その結果これはアルドラーゼの活性を有し、哺乳類のB型アイソザイムの性質を示した。これまでショウジョウバエのアルドラーゼアイソザイムα、β、γをクローニングし、その構造とアイソザイムの性質の決定した。それらはいづれもC型アイソザイムの性質を示すものであったので、6-2はショウジョウバエアルドラーゼのB型であることが推察され、分子進化上これまでカイコで見出した脂肪体や卵などの生殖器官で発現するS型アイソザイムと同じ位置にあるものであると結論した。しかし、S型アイソザイムは活性中心の変化は認められず、6-2は活性中心を変えることで機能は失わず、構造の維持により活性を保持していると推定され、このアミノ酸の置換と活性との関連に興味が持たれた。カイコのアルドラーゼと糖代謝との関係を観察するため、アイソザイムの種類と量を調べ、タンパク質の精製と遺伝子構造の解析を進めた。カイコのアルドラーゼはサブユニットのSとFにより5種類のアイソザイムを作り、それらが組織により発現が異なっていることが明らかになった。特に胚発生過程での卵でのアイソザイムのスイッチ機構に関心が持たれた。単離したS型cDNAはショウジョウバエアルドラーゼαと80%のホモロジーを有していた。精製したF型アイソザイムは非常に不安定であるため構造上何らなの変化が予想された。分子進化を考える上で、昆虫のアルドラーゼは良いマーカーであることが裏付けられた。
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