1.変異株の取得と解析 米国より導入した交配能を持ついもち病菌株を用い、NTG、UV、REMI法により変異処理を行った後、付着器形成欠損の形質を示す変異株を50株程度取得した。それらについてcAMPによる回復を指標とした検定により変異形質の特徴を推定したところ、得られたすべての変異株がcAMPの関与する過程以降の分化誘導後期変異株であることが判明した。また、変異株のうち、既知の現象であるConAによる付着器形成阻害反応と類似の形質を示す株について、交配による遺伝解析を行った。現在さらに詳細な遺伝解析を行っている。 2.分化形態形成時に特異的に発現する遺伝子群のディファレンシャルサブトラクション法による取得 付着器形成条件下の発芽胞子と、栄養成長時の菌糸からcDNAを用い、サブトラクション法により付着器形成初期に特異的に発現する遺伝子のクローニングを行った。付着器形成条件の発芽胞子からは、極めて微量のmRNAしか得られないことから、従来のドライバー-DNAのビオチンラベルによるケミカルサブトラクションにアダプター配列を利用したPCRによるテスターDNAの増幅濃縮法を組み合わせ、目的の特異的遺伝子群を含むと考えられるディファレンシャルcDNAライブラリーの構築に成功した。このライブラリーよりノーザンハイブリダイゼーション及びRT-PCR法により、分化時特異的に発現していると考えられたcDNAにつき、塩基配列の決定、染色体クローンの取得と解析を行った。現在さらにプロモーター領域の解析、遺伝子の機能解析を行っている。
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