1.マウス卵胞のギャップ結合は、卵胞成熟に伴いその数、面積を増大させ、排卵直前に、接合する上皮細胞に取り込まれる。実験的には、PMS投与48時間後さらにHCGを投与し1時間経過した状態で最も多量にギャップが結合形成される。ギャップ結合が増大する過程の卵胞上皮では、コネキシンの反応性が微弱で、細胞内局在と、その輸送系を同定することができなかった。このことは、凍結割断レプリカの観察結果から、粗面小胞体、ゴルジ小体のいずれの細胞内膜系にも、コネキシンを暗示する膜内粒子の分布密度が低いことによるものと思われる。 2.アポトーシス発現初期に上皮細胞間のギャップ結合の形成がみられるが、その進行に伴い、ギャップ結合は正常な上皮細胞によって取り込まれる。このことは、アポトーシス発現の情報をギャップ結合を介して隣接する正常上皮細胞に伝えられることを示唆している。また、卵胞閉鎖に伴う退縮はアポトーシスに陥った上皮細胞を正常細胞が貧食することによるもので、マクロファージなどの貧食細胞は関与しない。 3.アポトーシスに伴う形態変化として、上皮細胞の核濃縮に加えて、核内にアクチン様のストレスファイバーを出現を認めた。この傾向は好中球において実験的に再現可能である。好中球のアポトーシスによる細胞の形状変化は、アクチンの機能異常が関与していることを確かめた。 4.マウスの卵胞上皮では、生後3週齢から急激にアポトーシスが発現し、1次および2次卵胞に特に高頻度に発現し、閉鎖が盛んに行われることを確かめた。 5.自然性周期の卵巣に較べ、PMSおよびHCGを投与した場合、明らかに成熟卵胞の数が増大し、過剰に排卵されることが確かめられた。人工受精を目的に、過排卵の臨床操作は日常的で、閉鎖が運命づけられた卵胞を人工的に成熟、排卵、受精へと向かわせている。このことが着床後の胎児の成長にどのような影響を及ぼすか、今後さらに検討する必要がある。
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