ペアドボックスを有する転写因子であるPax-1は、上皮性体節から硬筋が分化しているのに先だって発現が始まる。Pax-1は、脊椎骨のパターン形成に重要な役割、特に腹側構造の形成に必要であることがPax-1欠失マウスであるundulatedの解析から明らかになっている。本研究では、Pax-1を過剰または異所性に発現するマウスを作成して、Pax-1の機能をより明らかにしていくことを目的としている。 ウズラPax-1をコラーゲン2(α1)のエンハンサー/プロモーターを用いて発現するベクターをES細胞に導入した後、キメラマウスを作製した。キメリズムは、ウズラPax-1に特異的なモノクロナル抗体を用いたウエスタンブロッティングとRNaseプロテクション法により13日胎児を用いて解析した。 その結果、25匹中23匹において同程度のウズラPax-1の発現が見られた。新生児を用いた脊椎骨の解析では約15%に脊椎骨の変形が観察された。腰仙部における椎体の変形または欠失と、尾椎の完全な欠失が見られた。このことは、Pax-1の過剰または異所性発現の結果、椎体を構成する軟骨芽細胞が正常な分化をしえなくなっていることを示唆している。しかしながら、表現型の浸透率が低いため、その過程でどのような組織学的以上が起こっているのか解析が困難となっている。そこで、ウズラPax-1をより効率的に発現するベクターを用いることにより、表現型の浸透率を高めることを現在試みている。これにより、軟骨芽細胞にどのような変化が起こっているのか、系統的な解析が可能になると思われる。
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