心筋と骨格筋の収縮調節蛋白質 troponin I(それぞれ CTnI と FTnI) が各筋細胞の筋原線維にどのように取り込まれるか、またこれらの TnI isoform のどの部分が取り込みに関係しているかについて、tag標識した CTnI と FTnI (それぞれ tagCTnI と tagFTnI) を培養心筋と骨格筋細胞に強制発現させ、蛍光抗体法により、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。 発現ベクター(pBK-CMV)に tag(癌遺伝子 c-myc)の合成 DNA を組み込み、 tag 標識を発現するベクターを作製した。このベクターに各種の TnI cDNAを組み込むと、TnI の N 末側に tag が付随して発現するので、c-myc 抗体により TnI isoform の筋原線維へ取り込みを観察することができる。 これらの組み替え体(pBK.tag.CTnI および pBK.tag.FTnI)をそれぞれ心筋と骨格筋に導入した。多くの導入方法が検討されたがリポフェクトアミン法が最も効率良く、発現も強かった。tagCTnI と tagFTnI はそれぞれの筋細胞の筋原線維の横紋構造(I帯)に取り込まれた。また tagFTnI は心筋の筋原線維の横紋にも取り込まれた。しかし CTnIの本来発現しない骨格筋細胞に tagCTnI を強制発現させても横紋構造には取り込まれなかった。各筋細胞の筋原線維における tagTnI isoform の取り込みパターンは幼若な心筋と骨格筋における TnI isoform の存在様式と同じであった。タグによる TnI の取り込みの阻害はないと考えられた。骨格筋の筋原線維は CTnI を選別し、取り込まない機構が存在することが示唆された。
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