研究概要 |
研究目的:(1)骨格筋の誘導因子と筋蛋白質はどのような時間的かかわりを持って発現してくるかを調べる。(2)筋細胞に発現した蛋白質は、筋原線維にどのように取り込まれるかについて調べる。これらのことから筋細胞の発達過程における筋誘導因子と筋蛋白質の遺伝子発現の関係を調べ、筋がどのように誘導され、分化し、横紋構造を形成するかを分析する。 誘導因子の発現について:心筋の筋収縮調節蛋白質troponin C成分(CTnC)と筋誘導因子(Myf-5,myogeninとMyoD)の発現をニワトリ胚を用いてWhole mount noin situ hybridisationにより調べた。Myf-5,MyoDとmyogeninはそれぞれ孵卵約23-29時間後、33-38時間後および29-33時間後の大節に発現していた。CTnCmRNAはstage13から発現した。これらの結果は、いままでの報告より発現磁気が早く、それぞれの因子の発現順序は同じであった。 筋蛋白質の強制発現について:心筋と骨格筋のtroponin I成分(それぞれCTnIとFTnI)の細胞内での動態追跡のため発現蛋白質にタグ(c-μc)が付随して発現するよう発現ベクターを(pcMVmyc)作製した。このベクターによりCTnIとFTnIを各筋細胞に強制的に発現させ、c-myc抗体による蛍光抗体法を用いて観察した。心筋の筋原線維にはCTnI、FTnIが取り込まれた。しかし骨格筋の筋原線維ではFTnIのみが取り込まれ、CTnIは取り込まれなかった。筋蛋白質の横紋構造への取り込みには優先順位のあることが判明した。次にキメラTnIおよび不完全TnIを各筋に発現させ、TnIの筋原線維への取り込みにはTnIの尾部が重要であることが明らかとなった。 以上のことからタグ標識法は筋原線維の形成の解析に有効であった。筋蛋白質は筋原線維に対して固有の親和性を持っており、各筋に特徴的な筋原線維の形成に重要であることが明かとなった。
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