ヒト赤血球膜細胞質側にはスペクトリンがアクチン、バンド_<4・1>などの蛋白質と結合して網目状構造を形成している。さらにこれらの網目状構造はアンキリンやバンド_<4・1>を介して、細胞膜脂質二重層を貫通しているバンド_3やグリコフォリンに結合して、赤血球膜を安定化していると考えられている。本年度は新鮮無固定赤血球膜細胞質側を高解像力で三次元的に解析する方法の開発と膜骨格蛋白の抗体作成を行った。(1)ヒト新鮮無固定赤血球ペレットを遠沈して作成した。(2)赤血球内可溶性蛋白質を除去するために、細胞内電解質組成緩衝液中にてグルタールアルデヒドとアミノプロピルトリエトキシシランを被覆した2枚のカバーガラス間で赤血球をはさみ二分割した。(3)次いで液体窒素冷却イソペンタン・プロパン混合液(約-193℃)中で急速凍結した。(4)現有設備のターボ分子ポンプ装備エイコ-社製FD-3AS装置内(-95℃、2-6X10^<-7>Torr)で15〜30分間デイ-プエッチング(氷を昇華)をかけた。(5)白金と炭素を回転蒸着して、型のごとくレプリカ膜を作製した。(6)現有設備の日立H-8100電顕でレプリカ膜よりステレオ写真を撮影し、新鮮無固定赤血球膜骨格構造の三次元的解析を行い、細かい網目状構造を確認した。[モノクロナール抗体の作成](1)ヒト赤血球膜より、スペクトリンなどの蛋白をイオン強度のグラデイエントを用いたカラムクロマトシステムにより精製した。さらにSDS及びレクタンゲル電気泳動装置とゲル乾燥器により蛋白分析を行なった。(2)各々の蛋白をBALB/Cマウスに免疫後に、脾臓を摘出してリンパ球を採取した。(3)培養ミエローマ細胞と融合させてモノクロナール抗体を作成した。(4)赤血球膜裏打ち構造を形成するスペクトリン蛋白などの数十種類のモノクロナール抗体を確認した。
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