従来から赤血球膜裏打ち構造の形態学的研究では、樹脂包埋後の染色切片による透過型電顕法、あるいは赤血球膜脂質を界面活性剤で除去させた後に走査型電顕で観察する方法があった。本研究では、独自に開発した急速凍結・ディープエッチング法を使い、新鮮無固定赤血球膜を免疫細胞化学的に検索した。すでに平成7年度には、新鮮無固定赤血球膜細胞質側を高解像力で三次元的に解析する方法を開発し、さらに赤血球膜骨格蛋白の抗体を作成した。平成8年度には、膜骨格蛋白の免疫染色標本により、その局在は結合様式を明らかにした。(1)ヒト新鮮無固定赤血球ペレットを遠沈して作成した。(2)赤血球内可溶性蛋白質を除去するために、グルタールアルデヒドとアミノプロピルトリエトキシシランを被覆した2枚のカバーガラス間で、赤血球をはさみ二分割した。(3)平成7年度に作成されたスペクトリン等に対するモノクロナール抗体で免疫染色した。(4)次いで液体窒素冷却イソペンタン・プロパン混合液(約-193℃)中で急速凍結した。(5)ターボ分子ポンプ装備エイコ-社製FD-3AS装置内(-95℃、2-6X10^<-7>Torr)で15〜30分間ディープエッチング(氷を昇華)をかけた。(6)白金(角度24°)と炭素(角度90°)を回転蒸着して、型のごとくレプリカ膜を作製した。(7)日立H-8100電顕でレプリカ膜よりステレオ写真を撮影し、三次元的解析を行った。これにより、固定による修飾を受けない新鮮無固定赤血球膜細胞質側に局在し、外力により動的に変化するin situスペクトリン網目状構造を明らかにすることができた。
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