1)免疫応答の場としての皮膚・粘膜上皮におけるランゲルハンス細胞の動態に関する研究:皮膚は、免疫系細胞の常在する免疫臓器でもある。抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞は、表皮から真皮にはいり、リンパ管経由でリンパ節に至り、そこで免疫応答の開始に働くので、この細胞の動態は免疫系細胞と結合組織マトリックス成分との相互作用を調べる良いモデルとなることが明らかとなった。 2)真皮モデルとしての細胞外基質成分とマクロファージの相互作用に関する研究:三次元ゲル形成の前段階として、種々の細胞外基質(ECM)上でのMφの接着と伸展を明らかにする目的で、U937細胞から分化させたMφを、I型コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、ウシ血清などでコートした培養面上で培養し、その形態をTEMおよびSEMで観察した。繊維性のコラーゲン上で培養されたMφは、他の条件と異なり、細胞質の伸展が阻害され、遊走性が高まることを示した。I型コラーゲンはチロシンリン酸化によるシグナルトランスダクションの引き金にはならないことがわかった。 3)VI型コラーゲンの関与に関する研究:真皮を構成するコラーゲンのうちで、VI型コラーゲンはプロテオグリカンを介してコラーゲン細線維と結合し、コラーゲン線維束を安定化させ、かつその規則的な配列に関わっている。胎盤、尾腱、関節滑膜、下顎頭線維層などにおいてVI型コラーゲンの局在を調べ、VI型コラーゲンは他のマトリックス分子と協同してそれぞれの特徴ある組織構築に与っていることを明らかにした。 4)原子間力顕微鏡(AFM)によるコラーゲン細線維の三次元的観察法の試み 生体においてコラーゲン細線維の表面にはプロテオグリカンなどが付着して、線維間距離、細胞との相互作用などに与っている。AFMを用いてコラーゲン細線維の表面構造やゲルの立体構築の構造解析を行った。
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