研究概要 |
1、ラット脳室の上衣細胞の線毛に存在するG蛋白質 細胞膜にある受容体からの情報を細胞内に伝達するG蛋白質にはGo・Gi・Gsなどが知られている。これまでの報告によると、ラットの脳室系の上衣細胞の線毛にはGoが存在すると報告されていた(Peraldiら,1989)。しかし、今年度の研究により、ラット脳室の上衣細胞の線毛には、GoでなくGi2が存在する事が明らかになった。さらに、Gi2は、卵管上皮や気管上皮の線毛にも存在する一方で、精管上皮の不動毛には存在しない事が明らかになった。これらの所見より、Gi2は脳室、卵管、気管上皮の線毛の運動に関わる情報伝達に関係していることが示唆された。さらに、脳室上衣細胞の線毛におけるGi2の局在を免疫電子顕微鏡的に検索すると、Gi2は、線毛の細胞膜にのみあり、線毛の中心部には存在しなかった。この所見により、Gi2は線毛の細胞膜と周辺細管との間の情報伝達に関与しているのではないかと推測された。 2、嗅覚系におけるHeme oxygenase-2(HO-2)の局在 嗅細胞ににおい物質を加えるとcGMPレベルが上昇するが、HO-2阻害剤の存在下では、そのcGMP上昇は認められない。この事は、HO-2がにおいの情報伝達になんらかの役割をはたしているらしい事を示している。そこで、HO-2のペプチドに対する抗体を作成して、ラット嗅覚系におけるHO-2の局在を検索した。その結果、HO-2は、嗅粘膜と鋤鼻器官の感覚細胞をはじめ嗅神経線維、鋤鼻神経、嗅球の僧帽細胞や糸球体周囲の神経細胞などに広く分布しており、においの情報伝達に大きな役割を果たしている事が示唆された。 3、ラット鋤鼻器官におけるG蛋白質Gi2,Goの局在 ラットの鋤鼻器官におけるG蛋白質Gi2,Goの局在を検索した。その結果、Gi2とGoは、鋤鼻器官の感覚細胞、鋤鼻神経に存在した。さらに、感覚細胞の先端面が強く免疫染色されたが、こういった部には生殖行動に深く関与するにおいの情報に対する受容体が存在すると考えられ、興味深い所見と思われた。
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