研究概要 |
ラット脳室の上衣細胞の線毛に存在するG蛋白質 細胞膜にある受容体からの情報を細胞内に伝達するG蛋白質にはGo・Gi・Gs・Gqなどの種類が知られている。ラットの脳室系の上衣細胞の線毛にはGoが存在すると報告されていた(Peraldiら,1989)。しかし、昨年度の研究により、ラット脳室の上衣細胞の線毛には、GoでなくGi2が存在する事が明らかになった。さらに、Gi2は、卵管上皮や気管上皮の線毛にも存在する一方で、精管上皮の不動毛には存在しない事が明らかになった。これらの所見より、Gi2は脳室、卵管、気管上皮の線毛の運動に関わる情報伝達に関係していることが示唆された。さらに、脳室上衣細胞の線毛におけるGi2の局在を免疫電子顕微鏡的に検索すると、Gi2は、線毛の細胞膜にのみあり、線毛の中心部には存在しなかった。 今年度は、脳室上衣細胞の線毛の細胞膜におけるGi2の特徴的な局在を生化学的に確認するために、ラット脳の脳室付近の脳組織と、一般の脳皮質の組織を眼科用ハサミで採取した。電気泳動でこれら2つの組織の同じ蛋白量を流してGi2抗体でイッムノブロットを行った。その結果、脳室周囲組織におけるGi2に相当するバンドが、脳皮質のGi2に相当するバンドより太かった。これは、上衣細胞を含む脳室周囲により多くのGi2が存在することを意味し、上衣細胞の線毛の細胞膜にGi2が特異的に存在するという免疫組織化学による所見を生化学的に支持する結果と思われた。
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