研究概要 |
我々は、プログラム細胞死(アポトーシス)が、上皮と間葉細胞の相互作用による器官形成過程(特に四肢や口蓋形成過程)において重要な役割をなしていることを平成7年度までの研究結果より以下のように明らかにした。哺乳類の口蓋形成過程におけるプログラム細胞死は、口蓋突起の正中縫線上皮細胞のうち、間葉細胞に形質転換(transformation)できなかった細胞を排除するために起こっている可能性を見出した。また、四肢の形態形成過程におけるプログラム細胞死の発現時期や部位を詳細に検討した結果、プログラム細胞死には、上皮と間葉細胞の相互作用による指の形成過程において、指の分離のほかに五指の形成される位置や大きさを決定する役割を果たしていることを見い出した(Mori et al, Anat Rec,1995)。以上の結果より四肢や口蓋形成過程におけるプログラム細胞死(アポトーシス)の生物学的意義に関する新しい仮説を提唱した(Mori, Acta Anatomica Nipponica 1995, in Press)。 また、化学物質による誘発奇形を異常発生の実験モデルとして用い、多指症、合指症などの奇形発生メカニズムを明らかにする目的で、プログラム細胞死に関連する遺伝子及び形態形成遺伝子(growth factor & growth factor receptor, Hox gene, oncogeneなど)の経時的発現パターンを正常発生及び異常発生で、in situ hybridization法やwhole mount in situ hybridizationなどの方法を用いて現在比較検討中である。さらに、in vitro実験系において、プログラム細胞死に関連する遺伝子及び形態形成遺伝子をアンチセンスオリゴヌクレオチドによって選択的に抑制することによってその機能を解析し、プログラム細胞死及び上皮・間葉相互作用の異常と奇形発生との関連を解明する実験に取り組んでいる。
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