以下の結果が得られた。 1.末梢神経(伏在神経)の再生軸索が基底膜のチューブ内を伸びる実験系を開発した。この再生軸索にbFGFを局所投与すると、bFGFは基底膜を通過してチューブ内に浸透したが、bFGFは再生軸索の細胞膜に、再生軸索が基底膜と接触している部位でのみ結合した。このときbFGFの免疫組織化学の反応は細胞膜上で点線状に認められた。再生軸索が基底膜と接触しない部位ではbFGFと再生軸索の結合は成立しなかった。 2.bFGFのレセプター(FGFR-1)が、再生軸索の細胞膜に点線状に発現した。この発現は、再生軸索が基底膜と接触する部位と接触しない部位の両方において認められた。しかし、再生軸索がシュワン細胞の突起で囲まれるようになると消失した。 3.正常伏在神経の軸索表面にはbFGFの免疫反応も、FGFR-1の免疫反応も認められなかった。 これらの結果から、bFGFのレセプターは障害時に、抹消神経再生軸索の細胞膜に一過性に発現するが、その機能は再生軸索が基底膜と接触することによって初めて発揮されることが示唆される。言い換えると、末梢神経の再生過程において、神経細胞が直接bFGFを利用して、その栄養効果を享受するためには、自身がシュワン細胞の基底膜と接触することが必須であると考えられる。本研究の解析結果は、末梢神経の再生のメカニズムを明かにすることに寄与すると思われる。
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