研究概要 |
マウスの二次リンパ組織のにおいてL-selectinのリガンドの局在を調べた。ともにムチン様糖蛋白であるCD34とGlyCAM-1はリンパ節高内皮細胞以外でも発現しているが,L-selectinと結合し得るような糖鎖修飾を受けるのは大部分リンパ節の高内皮細胞であることが確かめられた。CD34はリンパ節,パイエル板の毛細血管,毛細血管後細静脈(高内皮細静脈)および静脈の内皮細胞に広く発現している。GlyCAM-1は末梢リンパ節では高内皮細静脈のすべての高内皮細胞と少数の毛細血管の内皮細胞に発現している。腸間膜リンパ節では高内皮細静脈の大部分の高内皮細胞と少数の毛細血管の内皮細胞に発現しているが,一部の高内皮細胞ではGlyCAM-1の発現がないか非常に低い。パイエル板の高内皮細静脈にもGlyCAM-1を発現しているものがある。しかし,L-selectin-IgGはリンパ節の高内皮細胞のみに結合した。したがって,その他の部位で発現しているCD34とGlyCAM-1はL-selectinに対するリガンド糖鎖をもっていないか、非常に少ないと考えられる。これは高内皮細胞ではリガンドタンパク分子が発現しているだけでなく、糖鎖合成および糖鎖修飾経路が正確に制御され特異的な糖鎖をもった機能的リガンドがつくられていることを示している。 リンパ節血管addressinに対する抗体であるMECA-79でマウスのリンパ節を免疫電顕法で調べた結果,MECA-79は高内皮細胞の細胞表面と細胞質だけでなく,高内皮細胞の基底側の基底膜線維層に強く結合していることがわかった。この部位にはCD34もGlyCAM-1も発現していないので,基底膜線維層に第三のL-selectinリガンドが存在している可能性がある。Hemmerick等(1994)は生化学的手法で,CD34,GlyCAM-1の他に,マウスのリンパ節でL-selectinと結合する200kDの糖タンパク(Sgp200)を見つけている。基底膜線維層のリガンドとSgp200の関係を明らかにすることが重要であると考えている。
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