マウスの二次リンパ組織においてL-selectinのリガンドの局在を調べた。リンパ節毛細血管後細静脈の高内皮細胞には、リンパ球ホ-ミングレセプターL-selectinのリガンドCD34とGlyCAM-1が発現していることが知られている。L-selectinのリガンドのより詳細な局在を明らかにするために、抗CD34抗体、抗GlyCAM-1抗体と、L-selectinを介したリンパ球の接着を阻害する抗体MECA-79を用いて免疫組織学適検索を行った。その結果、リンパ節高内皮細胞の細胞表面と細胞質だけでなく、血管周囲結合組織線維鞘(基底膜線維層)にMECA79抗原(末梢リンパ節addressin;PNAD)の局在を見つけた。この部位にはCD34もGlyCAM-1も発現しておらず、リンパ球がリンパ組織内へ遊走していく機構に関与している第三のL-selectinリガンドである可能性が考えられる 免疫刺激によるL-selectinリガンドの発現の変化を調べるために、マウスの後肢足蹠にフロイント完全アジュバンドを皮下注射し、所属リンパ節でのL-selectinリガンドの発現状態を免疫組織化学的に検索するとともに、血中のGlyCAM-1をELISA法で測定した。免疫刺激後3-7日で排導リンパ節である膝窩および鼠径リンパ節は著明な肥大化を起こす。このとき、これらのリンパ節の高内皮静脈では、CD34の発現には変化が見られないが、GlyCAM-1の発現は顕著に低下する。一方、血中のGlyCAM-1は、抗原刺激後増加し、24時間後には最高値となり、その後減少し、3-7日で正常値に戻る。また、血中に存在する可溶性のL-selectinと結合している。リンパ節高内皮細胞から分泌されるGlyCAM-1は、血管内皮への接着リガンドではなく、リンパ節へのリンパ球の過度の流入を抑えている調節因子として機能すると同時に、大量のリンパ球の流入に伴い発生している、可溶性L-selectinに結合し、その生理作用を抑える中和剤としても機能していると考えられる。
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