1.材料の収集と標本の作成 2.研究の経過 (1)光顕所見:脳脊髄液の吸収(静脈洞への流入)と関連すると考えられるクモ膜顆粒の形態構造は複雑である。(1)クモ膜顆粒は硬膜静脈洞内へ突出しているだけではなく、硬膜組織間内にも多数の集簇巣として存在する。この場合は必ずしも静脈内に存在するとは限らず、脳脊髄液の流出経路が問題となる。(2)硬膜内に分布する割合と太い静脈内にも顆粒として出現している。(3)クモ膜顆粒はクモ膜下腔の組織と連続しており、洞内に突出する部分では、同様にクモ膜・クモ膜下腔を構成する細胞・組織が互いに多くの突起を分枝しつつ複雑な網工をなし、腔所(小管腔形成)が見られる。この小腔所内は脳脊髄液の流路と考えられる。(4)脳脊髄液の吸収のメカニズムの解明として、脳液圧、血流との圧差、浸透圧の問題の他に組織的に管腔形成とその流出孔の存在、弁装置の有無等を検索するとともに隣接する支持組織としての硬膜とクモ膜組織の間の構造上、脳脊髄液の流出機序に関与するメカニズムの解明が研究継続の課題となった。(5)静脈洞、硬膜等、隣接するクモ膜顆粒との間にsubendothelial spaceとも呼ぶべき腔所がみられる(人工的なものではないと考える)。この腔所には脳脊髄液が灌流していることが予想され、洞内皮細胞を通じての液体、物質の移動が示唆される。この間の交通路を確認する必要がある。 (2)電顕所見:走査電顕的にクモ膜顆粒表面は脳脊髄液吸収の場として静脈洞内皮細胞とは異なっている。このことは静脈洞に突出するクモ膜顆粒は必ずしも静脈内皮細胞に被われていないことを示している。
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