研究概要 |
1.サル網膜の色覚経路に水平細胞がどのように関与するか、を調べるために、連続切片電顕写真からHI型とHII型の水平細胞を立体構築した。HI型は7、8個の赤および緑の錐体視細胞との間に約40個のシナプスをもつ。HII型は赤と緑だけでなく青錐体からも入力を受けることが特徴であり、受容野が比較的広い。錐体と水平細胞の間における色信号の収束と拡散を決めるために、この解析を継続中である。 2.赤色光による照射とNTB(ニトロブルーテトラゾリウム)による酵素組織化学を施して赤錐体を特異的に標識する、という方法は、1977年ScienceのVol. 196, 454〜456に発表されたMarc and Sperlingによるサル網膜の研究に基づく。日本でも魚網膜に適用された例があり、positiveな結果が出てる。しかし、彼らの結果は再現性が乏しいという議論もある。例えば、1992年NatureのVol. 360, 677〜679に発表された、Mollon and Bowmakerによる顕微分光法の知見とMarc and Sperlingの結果は一致していない。最近、細胞内情報伝達系の一つとして、一酸化窒素(NO)が脚光をあび、その存在が下等脊椎動物網膜の視細胞内節で証明されている。NOの活性を組織化学的に調べるのにNTBを使うことから、Marc and Sperlingの実験がNOと関連しているかも知れない。今のところ事態は明瞭でなく、十分な方法論の検討が不可欠である。 3.たとえ酵素組織化学を施さなくとも、サル網膜の優れた固定標本を得ることには、意義がある。中心窩には毛細血管さえ無いので、血管灌流を先と同時進行的に眼球内灌流を行なう固定法を適用する予定である。
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