研究概要 |
平成7年度は胎子性マクロファージに関する研究を,肝臓マクロファージの起源と機能分化に焦点を合わせて発展させた.肝臓造血発生時におけるマクロファージの存在[Sasaki, 1990]ならびに肝臓における赤芽球島の形成[Sasaki et al., 1993]を基盤として,類洞マクロファージと赤芽球島中心マクロファージの細胞表面糖衣構造を観察し,レクチンの中でも特にGS-IB4とSBAについて興味ある結果を得た.GS-IB4とSBAの細胞膜結合に肝臓造血期にマクロファージと肝細胞の間で差異が生じ,これから類洞マクロファージから赤芽球島中心マクロファージへの分化についての経路が明らかになった[Iwatsuki et at.].さらに卵黄嚢造血期の血管腔マクロファージが肝臓類洞マクロファージの前駆細胞であることを観察し,論文として報告した[Sasaki et al. Arch Histol Cytol 1995].卵黄嚢造血期の血管腔マクロファージから肝臓類洞スカベンジャーマクロファージさらに肝臓赤芽球島マクロファージへの分化についての見解は論文“Origin and fate of the central macrophages of erythroblastic islands in fetal and neonatal mouse liver"として現在雑誌(MRT)に投稿中である.7年度の研究の過程で,肝臓造血の当初,血管腔マクロファージや類洞マクロファージの食作用の対象は循環原始赤血球と放出された赤芽球核ならびに原始赤血球細胞断片であることが明らかになった.また,新生時期の肝臓ではマクロファージはプログラム細胞死した好中球を取り込み,食作用の対象は胎子の発達と関連し変化する.これらの結果はいずれも論文に印刷中である。
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