研究概要 |
1.マウス胎子肝臓造血の推移にともなうマクロファージ食作用の変化 (1)造血発生初期 肝臓原基の類洞腔内には,卵黄嚢原始赤血球が大量に含まれる.原始赤血球の核は異染色質が核膜に沿った半月状に凝集するなど,アポトーシス様の変化を呈し,最終的に小型の核遺残体となる.マクロファージは細胞死の兆候を呈する原始赤血球を活発に取り込む.原始赤血球核はTUNEL法で陰性である. (2)恒久性赤血球生成期 類洞より肝細胞索内に移動したマクロファージを中心に,赤芽球島が形成される.肝臓マクロファージは恒久性赤血球生成における好酸赤芽球から放出された赤芽球核(TUNEL法陽性)を活発に取り込む. <結論>胎子肝臓のマクロファージははじめ卵黄嚢で産生された短命な赤血球の処理にあたり,のちにその一部が赤芽球島中心マクロファージへと分化,肝臓における恒久性赤血球生成に重要な役割を演ずる. 2.肝臓造血終末期の造血細胞・造血構造の変化 出生直後の肝臓には2種類のマクロファージが含まれる.すなわち,赤芽球島中心マクロファージと類洞腔ないし類洞内皮細胞間に存在するスカベンジャーマクロファージで,門脈を介して肝臓に大量に流入する乳脂粒滴に対していずれも活発な食作用を呈する.この時期に酸フォスファーターゼを含有するライソゾーム性の顆粒がマクロファージ細胞質内に増加することが電顕組織化学的に観察できる.赤芽球島マクロファージの食作用はその後低下し,赤芽球が中心マクロファージから離脱,中心マクロファージは細胞死にいたる.類洞マクロファージでは酸フォスファターゼを含むライソゾームは発達して,迂曲小管複合体を形成する. <結論>肝臓スカベンジャーマクロファージから分化した赤芽球島中心マクロファージは肝臓造血の終末期に細胞死にいたり,類洞腔にスカベンジャーマクロファージが残る.この細胞とクッパー細胞との詳細な対応は,ライソゾームの形態的な特徴や組織化学的な観察と併せて今後の課題の一つである.
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