研究概要 |
1.カドヘリン様物質が存在するかどうか 組織を構成する細胞膜表面上には,カドヘリンといわれる細胞接着因子が存在するので,胸腺内で自由に移動できるリンパ球表面には,このカドヘリン様物質が存在しないと考えられる.そこで,抗汎カドヘリン抗体を,胸腺組織の凍結切片に反応させ,蛍光抗体法で検出を試みたが,対照に比較して,反応に有意の差がみられなかった.したがって,胸腺リンパ球表面にはカドヘリン様物質は存在しないか,マスクされている可能性がある. 2.接着阻害作用を有するテネシンが存在するかどうか 今回,培養細胞系で細胞伸展を阻止する因子の存在が示唆されたので,最近接着阻害因子として注目されているテネシンとの関連を調べた.液性因子をブロッティングして,抗テネシン抗体と反応させた結果,陽性反応が検出された. また,胸腺の凍結切片と抗テネシン抗体の反応でも,陽性反応が観察された.以上の結果から,胸腺の微小環境内にはテネシン様物質が存在しリンパ球を接着させないように機能している可能性が示唆された. 3.伸展阻止因子の今後の研究の展望 この因子がガン細胞にのみ作用することが明らかになれば,ガン細胞の転移のメカニズムを考える上で重要な役割を示すことになる.
|