研究概要 |
ラット耳下腺腺房細胞のCa^<2+>ストアに存在すると考えられるリアノジン感受性Ca^<2+>放出機構の特性を調べるために、単離小胞体標本による^<45>Ca^<2+>フラックスと、単離細胞標本による、Ca^<2+>依存性K^+およびCl^-電流を測定した。 1.単離小胞体標本による^<45>Ca^<2+>フラックスの測定:1)カフェイン(10〜40mM)、低濃度(10μM)のリアノジンと環状ADPリボース(cADPR1〜10μM)は小胞体よりCa^<2+>を放出させる。2)カフェイン(40mM)によるCa^<2+>放出は,10μMのリアノジンの前処理により効果が促進されるが、500μMのリアノジン並びに50μMのルテニウムレッドの存在で著明に抑制された。3)cADPR(4μM)によるCa^<2+>放出も,500μMのリアノジンの前処理並びに50μMのルテニウムレッドの存在で著明に抑制された。4)低濃度(0.5μM)のcADPRはそれ自身、有意なCa^<2+>放出を起こさないが、カフェインによるCa^<2+>放出の用量応答曲線を左に移動させた。 2.単離細胞標本によるCa^<2+>依存性K^+及びCl^-電流の測定:1)1〜40mMのカフェインは用量依存性にCa^<2+>で活性化されるK^+及びCl^-電流を誘発した。2)リアノジン20μMを細胞内に注入すると、カフェイン(40mM)とアセチルコリン(ACh30nM)による電流応答は増強された。リアノジン200μMを注入すると、カフェイン(40mM)の作用は抑制された。3)cADPR(1〜2μM)を細胞内に注入すると、カフェイン(40mM)とACh(30nM)の作用はどちらも増強された。4)ルテニウムレッド50μM存在下でカフェイン(40mM)の作用は著明に抑制された。 以上の結果より、筋肉や神経などの興奮性細胞で報告されている、リアノジン受容体と同様の性質を持つCa^<2+>放出機構が、ラット耳下腺腺房細胞の小胞体膜上に存在し、分泌刺激時のCa^<2+>動員機構にも関わっていることが示唆された。尚,このCa^<2+>放出機構の受容体としての性質を調べる為に、^3Hで標識されたリアノジンによる結合実験も現在進行中である。
|