Na^+-Ca^<2+>交換蛋白の細胞質側に存在すると考えられているループには塩基性アミノ酸が多く集まるXIP(eXchanger Inhibitory Peptide)領域が存在する。XIP領域のアミノ酸配列はNa^+-Ca^<2+>交換蛋白の3つのサブタイプ間でよく保存されており、Na^+-Ca^<2+>交換機能に重要な役割を担うと推測される。またXIP領域に相当するペプチドはNa^+-Ca^<2+>交換活性を抑制することが知られている。このXIP領域の機能を調べる目的で、犬心臓由来のNa^+-Ca^<2+>交換蛋白(NCX1)のXIP領域(アミノ酸219-238)に部位特異的変異を導入した。そしてアフリカツメガエルの卵母細胞にNCX1蛋白を発現させ、その活性をinside-out giant membrane patch法を用いて電気生理学的に解析した。 XIP領域の変異体のうち、特に229-232領域の変異体の大部分においてはNa^+依存性不活性化過程が観察されなかった。つまりwild typeにおいては細胞質側のNa^+で活性化された外向きNa^+-Ca^<2+>交換電流は時間とともに減衰する。しかし229-232領域の変異体の大部分においては時間依存性外向き電流の減衰がなく、Na^+依存性不活性化が欠如していた。これらの変異体においてNa^+依存性、Ca^<2+>による活性化、膜電位依存性はwild typeと比べ明らかに違いがなく、Na^+依存性不活性化のみが欠如すると考えられた。 223-225領域の変異体においては、Na^+依存性不活性化は存在するが、Ca^<2+>によるNa^+依存性不活性化の抑制が著しく低下していた。このことからCa^<2+>によるNa^+依存性不活性化の調節がこの部位と関連すると推測された。 今後は、膜貫通領域の構造機能相関を調べ、Na-Ca交換蛋白のイオン交換機転を分子レベルでさらに明らかにしていく予定である。
|