心筋L型Caチャンネルの生理的でありかつもっとも主要な経路として分泌されたカテコールアミンがβアドレナージック受容体を刺激して最終的にはAキナーゼ(c-AMP依存性)によるリン酸化をチャンネルがうけて著しい電流増大を来すことがあげられる。一方私が平成7年度で示したように細胞内Mg^<2+>濃度([Mg^<2+>]_i)を1μMまで低下させた場合もリン酸化刺激と同じように同等かそれ以上の大きな作用を示した。ところが細胞内のMg^<2+>濃度は生理的にはここまで低下しないため、このMg^<2+>の効果は生理的にどのような意味があるか疑問のままであった。そのため本年度はチャンネルのリン酸化と細胞内のMg^<2+>の関係に焦点を絞った研究を目指した。いったんチャンネルをリン酸化させた後、細胞内のMg^<2+>が低下してもチャンネルが脱リン酸化しないように細胞内にフォスファターゼインヒビターを投与し、その条件で[Mg^<2+>]_iを変化させリン酸化したチャンネルを通るCa電流と[Mg^<2+>]_iの関係を調べた。その結果チャンネルはリン酸化を受けるとMg^<2+>との結合能力が低下し細胞内Mg^<2+>によるブロックから免れるという考えを支持する所見を得た。さらにリン酸化による刺激と細胞内Mg^<2+>による電流増大時の単一チャンネルの挙動は両者で同じ性質を示している事実をつかんだが、これはこの考えを支持するものである。またこの研究によりリン酸化以降のメカニズムとしてリン酸化による細胞内Mg^<2+>のブロックの解除が存在する事をはじめて示した。
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