研究概要 |
酵素処理により得られたモルモット心房筋細胞にパッチクランプ法を適用して,P_2-プリン作動性受容体(P_2-受容体)による心筋ムスカリン性K(_<ACh>)チャネルの制御性修飾機構について検討を行った.P_2-受容体刺激は細胞外ATP(0.1-100μM)投与により行った.全細胞膜電流記録(whole-cell recording)実験により得られた結果は以下の点である.1)細胞外ATPは,ムスカリン性受容体やP_1-受容体刺激により活性化されたK_<ACh>電流を可逆的に濃度依存性に抑制した(IC_<50>=5.4μM).2)細胞外ATPは,非水解性のGTPアナログであるGTP-γS(100-200μM)の細胞内投与により誘発されたK_<ACh>電流を不可逆的に濃度依存性に抑制した(IC_<50>=4.5μM).3)百日咳毒素にて前処置した細胞においてもGTP-γS(100-200μM)の細胞内投与によりK_<ACh>電流が活性化されが,細胞外ATPはこのK_<ACh>電流をも不可逆的に濃度依存性に抑制した.これらの結果から,P_2-受容体によるK_<ACh>チャネルの抑制性修飾機構に百日咳毒素非感受性のG蛋白が関与していることが示唆された.また,その抑制はG_Kの活性化以降のステップで、すなわちG_K-K_<ACh>チャネルのレベルで起こっていると思われた.cell-attached modeによる単一チャネル電流記録実験により,以下の点が明らかになった.細胞灌流液(細胞外液)に加えたATP(10-100μM)は,パッチ電極内のアセチルコリン(0.1-1μM)により活性化されたK_<ACh>チャネルの活動をその開口確率を減少させることにより抑制した.この実験結果は,P_2-受容体による抑制性情報伝達機構に細胞内を拡散するセカンドメッセンジャーが関与していることを示唆する.以上まとめると,P_2-受容体によるK_<ACh>チャネルの抑制性修飾機構に百日咳毒素非感受性のG蛋白が関与していること,および何らかの細胞内セカンドメッセンジャーが関与していることが,本研究により明らかとなった.
|