研究概要 |
心筋虚血時の細胞外K^+濃度の上昇はK-ATPチャネルを介した細胞内から細胞外へのK^+の流出によることが示唆されている。アデノシンは心筋虚血時に上昇するので我々はアデノシンA_1受容体を介してK-ATPチャネルを活性化して細胞外K^+濃度の上昇をもたらす可能性について検討した。拍動する心筋にマイクロダイアリシス法を適用することは困難とされていたが我々はこれらの問題点を解決した。5'-adenosine monophosphate(5'-AMP)を灌流すると濃度依存的に増加したが、5'-nucleotidase(5'-NT)の抑制材であるα,β-methyladenosine diphosphate(AOPCP)存在下ではアデノシン産生が認められなかった。したがって細胞膜上に存在する5'-NTがアデノシン産生に大きく寄与していることをin vivoマイクロダイアリシス法により証明した。この方法は心筋5'-NT活性を直接評価できるのでアデノシンの役割を解明するうえで極めて有用であると考えられる。ATP感受性K^+チャネル抑制剤であるglibenclamide及び5-hydroxydecanoateによるアデノシン産生に対する効果を検討したところglibenclamideは5'-NT活性を抑制したが5-hydroxydecanoateは抑制しなかった。glibenclamideは5'-NT活性を抑制し、アデノシン産生を減少させることが判明した。またK^+チャネル開口薬であるcromakalimにはアデノシン産生増加作用が認められなかったことからATP感受性K^+チャネル開口はアデノシン産生には関与していないと考えられる。以上の結果よりアデノシンの産生は5'-NT活性を反映しており、虚血による細胞外K^+濃度の上昇は少なくとも一部5'-NT活性により制御されていると考えられる。
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