研究概要 |
「目的」心筋において細胞間興奮伝導の障害は細胞の同期的興奮異常やreentryを惹起させ不整脈発生の重要な一因子となる。細胞間興奮伝導の良否はgap junction電気的抵抗の低高に依存し、gap junctionの抵抗はこれを構成するchannelの開閉に依存する。不整脈発生の重要な因子となる低酸素〜虚血下で見られる細胞内イオン強度変化、代謝産物のchannelへの影響、これらの影響の改善、修飾要素を追究することは、channel開閉機構及び不整脈発生、消退機構の解明に有意義となろう。低酸素下では細胞内CaとHイオンの増加が認められ、一方gap junction channelはCaやHイオンで閉鎖され、c-AMPで開口する。本研究では興奮伝導速度(CV)とgap junction抵抗を反映するlongitudinal internal resistance(ri)の同時評価のの方法を開発とこれを用い低酸素、細胞内Ca過負荷、酸性化におけるri CVの変化及び此れ等の変化に対するc-AMPの効果について検討した。「結果」1)3室隔絶法を用い細胞内活動電位と短絡抵抗回路による細胞外活動電位とからCVとriを同時に記録出来る方法を開発した。この方法で以下の結果を得た。2)低酸素下、CVの減少とriの増加との時間依存性対応が見られた。3)CV及びriが正常の40%,4倍になるとき伝導遮断、高不整脈発生率が認められた。4)c-AMPは低酸素下のCV、riの変化を予防且つ改善させた。5)c-AMPの効果発現の有無とgap junctionの微細構造の変化とは一致した。6)細胞内Ca過負荷、酸性化(低酸素時細胞内で起こり得る現象)でCV減少、ri増加を認めた。7)Ca過負荷下のCV、riの変化は低濃度c-AMPで改善されるが、高濃度では改善後増悪が認められた。8)pH6.5以上でc-AMPの改善効果が認められるがpH6.4以下では認められなかった。9)抗不整脈剤第三群の中に抗不整脈機序としてgap junctionの対する促進作用を持つものがあった。10)これらのc-AMP効果はPKA抑制剤で消失した。「結論」低酸素下のθ減少、ri増加はc-AMP-PKAで改善、抑制される。これはc-AMP-PKAのgap junctionに対する燐酸化或いはup-regulation効果であることが示唆された。また、Caイオン、Hイオンのgap junction connexinへの相互作用及び,両イオンのChannelへの結合がconnexinの燐酸化状態によって変化するかと言う重要な新たな課題が提唱された。
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