研究課題
一般研究(C)
現時点までに視索上核スライス標本および単離神経細胞標本、さらには神経細胞のモデルとして用いた牛副腎髄質細胞におけるカルシウム画像解析ならびにパッチクランプ法による電気生理学的なアプローチにより、種々の神経伝達物質およびその候補の作用に関して以下の事実が判明した。1.視床下部の室傍核ならびに視索上核のmagnocellular neurons領域に大量に含まれていることが判明していた神経ペプチドであるPACAPが強力な細胞内Ca濃度上昇作用を持っていた。そしてこの作用は持続性の脱分極ならびに活動電位の発生頻度増加を伴っていた。2.PACAPの持続性のCa濃度上昇ならびに膜電位の脱分極は膜電位非依存性の陽イオンチャネルの活性化が中心的に関与していた。また膜電位依存性のCaチャネルの関与も示唆された。細胞外Ca除去によりPACAPによるCa上昇は消失したことから細胞内ストアからのCa遊離は起きないことが確認された。3.視床下部神経細胞とは対照的に牛副腎髄質細胞ではPACAPは著明な細胞内ストアからのCa放出を引き起こした。この放出はCaffeine/Ryanodine感受性ストアからの放出であり、このCa放出の後、持続性の陽イオンチャネルの活性化が起こり、Ca流入が活性化することが明らかとなった。4.バゾプレシン分泌を亢進し、視索上核ニューロンを脱分極させる作用を持つことが知られるInterleukin-1βは視索上核ニューロンに明瞭な直接作用を有せず、prostanoidsの産生を介することが示唆された。5.prostanoidsの中でもPGE_2とPGD_2は両者ともに視索上核ニューロンに直接作用し、細胞内Ca濃度の一過性の減少にひきつづく上昇と膜電位の一過性の過分極に引き続く持続性の脱分極を引き起こした。
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