一酸化窒素(NO)は呼気ガスに微量ながら含まれる。このNOが呼吸生理学的にどのような意義をもつものであるかという問に答えるべく本研究は行われている。以前、我々は運動時の呼気ガスNOが増加することを報告した。これは、呼気のNOが肺血管に生じるずり応力の程度を示すパラメータである可能性を示唆したものであった。本研究プロジェクトでは、初年度に、上気道の通気度とNOの関係について研究をおこなった。特に鼻腔の通気度は運動によって増加する性質(鼻の通りが良くなる)をもつことが古くから知られており、その現象にNOが関与しているかどうかをまず検討した。研究の結果、鼻腔由来のNOが軽度の運動によって著しく減少することが見い出され、NOが鼻腔通気度の調節を行っている可能性が示唆された。この研究報告は、昨年欧州のEuropean Respiratory Journalに投稿され、本年受理された。また、この研究に引き続いて運動中の呼気NOの測定をリアルタイム化し、またオンラインでコンピュータに取り込むことを試みた。その結果、微量なNOの変化が詳しく把握できるようになった。この成果の一部は本年の日本生理学会において発表予定しており、論文の作成中である。また、鼻の通気度とNOの研究は、その後運動負荷を変化させる実験へと発展し、運動終了後の通気度の減少がほぼ完全にNOの増加と軌を一にすることが示され、ますますNOが通気度の調節を行っている我々の推測を補強した。この研究成果は、本年米国で開催される国際NO生物学会で発表予定である。
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