研究概要 |
環境温が皮膚交感神経活動中の発汗神経活動成分および血管運動神経活動成分に及ぼす影響について検討した.3人の健常成人男子を対象とし,臥位にて皮膚交感神経活動を微小神経電図法を用いて,先端直径1μm,インピーダンス3〜5MΩのタングステン微小電極2本を脛骨神経および腓骨神経に刺入し,両神経から同時記録法により皮膚神経束中の交感神経筋後遠心性線維を記録した.発汗は換気カプセル法にて,皮膚血流量はレーザードプラー血流量計にてモニターした.この末梢効果器である汗腺および皮膚血管括約筋の活動から生ずる発汗波および皮膚血流量の低下をもとに,皮膚交感神経活動バーストを発汗神経活動成分および血管運動神経活動成分にコンピュータにより自動分類することを目的とした.その結果,発汗神経活動成分のバースト持続時間は,血管収縮神経活動成分のバースト持続時間に比較して短く,その伝導速度の標準偏差も小さかった.また,脛骨神経中においては観察されなかった血管拡張性成分が,腓骨神経中においては認められた.これは,交感神経の地域性を示すものと考えられた.本研究の結果は,皮膚交感神経活動中の発汗神経活動成分と血管運動神経成分は,その性質によりコンピュータにより自動解析が可能になることを示す.また,脛骨神経および腓骨神経中の皮膚交換神経活動の血管拡張性神経活動の有無の違いは,有毛部と無毛部における発汗あるいは血管収縮に関与する可能性が示唆された.これらの結果は,ヒトの体温調節および精神的ストレスがヒトの体温調節に及ぼす影響を研究する上において,重要な所見となりうることが示唆された.
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