研究概要 |
運動、特に有酸素運動は、脂肪代謝を亢進し高脂血症、肥満の治療・予防に有効である。しかし、運動が血漿脂質を低下させ体脂肪を減らす詳しい機構は不明である。運動による体脂肪の減少は、単に運動による消費エネルギーの増加のみでは説明できない。興味深い仮設として、運動はこの中枢神経性体重調節系のセットポイントをリセッティングし、単に運動中だけでなく長期にエネルギー代謝に影響している可能性が示されてきた。 本年度の研究では、Wistar系ラットを用い、約2-3週間のトレッドミル運動のトレーニングを行った後、動脈圧及び中心静脈圧測定のためのカテーテル、体温測定のための熱電対、および心電図と腎交感神経活動測定のためのステンレス製電極を慢性留置した。ラットのトレッドミル運動(20m/min,30分間)前中後の循環動態、エネルギー代謝および腎交感神経活動の変化を観察した。 結果、動脈圧はトレッドミル運動により増加するが、運動後一過性の有意な低下を示した。呼吸商は運動後、対称群と比べ有意な低下を示した。これは運動後、エネルギー源としての脂質・糖質利用比率が脂質優勢になったことを示す。腎交感神経活動は運動により上昇したが、運動後に対照期より低いレベルで安定した値を示した。腎交感神経活動と呼吸商は、運動後2時間以上低レベルを維持し、類似した時間変化を示した。以上より、運動後の腎交感神経活動の低下と脂質利用促進との間に強い因果関係が示唆された。
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