ラットの腹腔内に、血圧・体温測定用テレメトリプローブを、さらに、頭部に脳波・筋電図測定用電極を植え込み、それぞれのパラメータが8時間の明暗サイクル位相前進(時差)によって、どのような変化を示すかを観察した。このテレメトリシステムを用いることにより、拘束のない自由行動下の被験動物において、血圧など複数の生体信号のリズムを観察することが可能になった。明暗サイクル位相前進前は、血圧・体温に関しては、明期に低く暗期に高いというサーカディアンリズムが観察された。血圧は、覚醒・睡眠リズムによる変化が相対的に大きかった。体温は、覚醒・睡眠リズムによる変化に比べ、サーカディアンリズムの振幅の方が大きかった。ノンレム・レム睡眠ともに明期に多く暗期に少ないというサーカディアンリズムを示した。明暗サイクル位相前進後、血圧・体温・ノンレム睡眠は明期・暗期の差がなくなり、全般的なリズムは平坦になった。血圧は、いぜん覚醒・睡眠リズムに伴う変化が大きかった。一方、従来、体温リズムと関連が深いと言われてきているレム睡眠は、明暗サイクル位相前進後も、そのリズムを保ち続け、血圧・体温リズムと解離した変化をしめした。このことは、レム睡眠のリズム発生に関して、血圧・体温・ノンレム睡眠のリズム発生のメカニズムとは異なったシステムが駆動している可能性を示唆している。
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