研究概要 |
脊髄切断後の血圧の回復過程における交感神経系の関与を検討するため本研究をおこなった。ペントバルビタール麻酔下でウィスター系の成熟雄ラットの下部頚髄を切断し室温30℃で飼育して慢性脊髄ラットとした。実験は室温30℃において無麻酔,軽度の拘束のもとでおこなった。血圧はTail Cuff法にて脊髄切断後毎日一定時刻に測定した。直腸温はサーミスター温度計で測定した。慢性的に頚静脈に留置したカテーターを介し随時静脈血を採取し,約0.3mlの血漿に内部標準としてDHBAを添加し,カテコールアミン類をアルミナ粉末に吸着した後,3%の酢酸または0.2Nの過塩素酸で溶出し高速液体クロマトグラフィーを用いて電気化学的方法でノルアドレナリン及びアドレナリンを測定した。血圧と心拍数は脊髄切断によって脊髄切断前に比較して低下した。脊髄切断前に120mmHg前後あった血圧が脊髄切断後1日以降は80〜100mmHgのレベルを維持した。脊髄切断2週目において心拍及び血圧の回復の傾向が認められた。血漿ノルアドレナリンの濃度は脊髄切断によって著明に低下したが脊髄切断後1週目26±22pg/ml(N=6;5.5±0.7days)よりも2週目,89±23pg/ml(N=8,10.9±0.7days)において有意(p<0.05)に高かった。一方、脊髄切断後1週目565±322pg/ml,2週目274±136pg/mlとかなりの濃度のアドレナリンが認められた。以上の結果より脊髄切断後の血圧,心拍の維持・回復に交感神経及び副腎髄質等からの液性的な因子すなわちホルモンが一定の役割を果たしていることが示唆された。
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