本研究者らは先にShaker K channelのhomologueであるKv1.2及びKv1.4をラット心筋よりクローニングし、Xenopusoocyteをもちいてそれぞれ遅延整流型、一過性外向きK電流をながすチャンネルを発現することを示した。さらにKv1.2とKv1.4とのtandem連結によるcDNAがコードするハイブリッドKチャンネルによる電流が心筋で観察される一過性外向き電流I_<10>と類似の性質をしめすことを明らかにした。本研究はこのハイブリッドKチャンネルで観察される速い不活性化に関与するチャンネル分子内の構造に検討を加えるために計画された。速い不活性化に関わる分子内の構造にはN末端やS4-S5linkerなどが知られているが、本研究ではハイブリッドチャンネルを構成する各々のサブユニツトのS4-S5linker及びS5-S6領域の役割について検討した。はじめにS4-S5linker領域について検討をおこなうため各々のサブユニットのS4-S5linker領域に点変異をもつcDNAを作製し、それぞれがコードするチャンネルについて不活性化の時定数を測定した。その結果Kv1.2またはKv1.4のいずれのサブユニットのS4-S5linker領域に点変異を持つハイブリッドチャンネルも同様の値を示した。このことからKv1.2、Kv1.4いずれのサブユニットのS4-S5linker領域とも不活性化ゲートのアクセプター部位として同等に働いていることが示唆された。またS5-S6領域の役割については各々のサブユニットの当該部位を入れ替えたcDNAやS5-S6領域がKv1.2、Kv1.4いずれかのみからなるcDNAを作製してそれらが発現するチャンネルの不活性化の時定数を測定した。これらのcDNAがコードするチャンネルによるK電流の不活性化についは現在実験進行中であるが、これまで得られたデータからはその時定数はほぼ等しいようである。以上の結果からハイブリッドKチャンネルにおいては本来不活性化を示さないKv1.2サブユニットもKv1.4サブユニットと全く同様に不活性化に関与していることが示唆された。
|