ニトログリセリンの血管平滑筋弛緩機序の研究でcyclic GMP依存性タンパク質リン酸化酵素(G-kinase)により分子量240kDaのタンパク質が細胞膜カルシウムポンプ活性増加と平行してリン酸化されることが見いだされ、240kDaタンパク質同定の研究が始まった。アミノ酸分析からIP_3受容体と相同なペプチドが見つかり、IP_3結合能、IP_3抗体で認識されることなどから、240kDaタンパク質が血管平滑筋のIP_3受容体であることが示唆された。これをふまえて、カルシウムチャネルとしての活性を持つかどうか、G-kinaseによりチャネル機能が修飾されるか否か等を研究する必要がでてきた。チャネル機能を測定するための方法として人工支質平面膜法を用いて検討を始めた。平面膜法の技術的な面を拾得するため、1) alamethicinチャネル、2)骨格筋分離筋小胞体(SR)のチャネル、3)平滑筋SRのチャネル、4)240kDaタンパク質のチャネル活性測定の4段階で研究を始めた。 Alamethicinによるチャネル活性発現は比較的容易であり電気生理学的な実験手法を学ぶのに最適であった。骨格筋SRのチャネルについては実験の10%程度にしか活性が発現せず、さらにシングルチャネル活性はその3分の1程度でごくまれにしか活性を認めることができなかった。平滑筋のSRではチャネル活性を全く観察できなかった。以上は平面膜実験法の困難さを示すものと思われた。次いで、精製された240kDaタンパク質からプロテオリポソームを作り平面膜に融合させ、チャネル活性を観察したがその発現を認められなかった。骨格筋SRを用いた研究でのチャネル活性発現の頻度を増加させること、すなわち平面膜実験法にさらに習熟することが必要と考えられるので、この点についてさらに努力する予定である。また240kDaタンパク質のチャネル活性発現は観察されなかったが、プロテオリポソームの段階でチャネル活性の有無の観察を行ってから平面膜を利用した研究に移る予定にしている。
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