研究概要 |
ヒスタミンは末梢組織において即時型免疫反応のメディエーターとして,中枢神経系においてヒスタミン神経伝達物質として機能する,そして,ヒスタミン受容体サブタイプのうちH_1受容体がそれらの機能を仲介する.ヒトのH_1受容体遺伝子はそのコーディング領域においてイントロンをもたなず,486個のアミノ酸から成る受容体タンパクをコードし,7個の疎水性領域をもつことを明らかにした.H_1受容体遺伝子は単一にしか存在しないが、H_1受容体mRNAは中枢神経には一種類(3.5kb),末梢組織には二種類(3.0kbおよび3.5kb)が発現する.そこで,H_1受容体遺伝子の転写機構とその調節機構について調べた.H_1受容体遺伝子の転写開始点は翻訳開始点から41baseおよび118base上流に存在した.ルシフェラーゼアッセイにより,翻訳開始点より263base上流までのノンコーディング領域はプロモーター活性を示した.同定したH_1受容体遺伝子プロモーター領域にはホルボールエステルによる転写調節因子に結合する塩基配列,AP-1およびAP-3,に非常に類似した配列が見いだされた.ホルボールエステルはH_1受容体遺伝子プロモーター活性を約3倍増加させた.ヒト子宮癌細胞由来のHeLa細胞にはH_1受容体が発現する.ホルボールエステルはHeLa細胞のH_1受容体レベルを約2倍増加させた.この増加はアクチノマイシンD,シクロヘキシミドにより阻害され,また,ホルボールエステルはH_1受容体mRNAレベルを約3倍増加させた.ホルボールエステルでH_1受容体レベルを上昇させたHeLa細胞において,ヒスタミン刺激によるイノシトールリン酸の蓄積は約3倍増加した.以上の結果から,H_1受容体遺伝子の転写調節機構はH_1受容体を介する情報伝達の新しい調節機構であることを明らかにした.
|