研究課題/領域番号 |
07670125
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
荻田 善代一 摂南大学, 薬学部, 助手 (90169219)
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研究分担者 |
米田 幸雄 摂南大学, 薬学部, 助教授 (50094454)
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キーワード | グルタミン酸レセプター / N-メチル-D-アスパラギン酸レセプター / シグナル伝達 / 転写制御因子 / activator protein 1 / CAMP response element 結合タンパク質 / ゲル移動度シフト法 / 海馬 |
研究概要 |
興奮性アミノ酸レセプターのサブタイプの一つであるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)は、学習・記憶などの中枢神経系の可塑性形成プロセスばかりでなく、脳虚血、低酸素あるいは低血糖などによる遅発性神経細胞壊死の発症メカニズムにも関与することは周知の事実である。これら長期的あるいは永続的な細胞機能の変動現象の出現にはレセプター活性化に伴う長期的な生化学的反応性変化の関与が考えられる。したがって本研究では、NMDAレセプター活性化に伴う核内ロイシンジッパー型転写制御因子Activator protein-1(AP1)、cyclic AMP-response element結合蛋白質(CREB)およびMyc蛋白の変動を検索する目的で、NMDA末梢投与による各転写制御因子のDNA結合能の変化をゲル移動度シフト法により解析した。NMDA投与(150mg/kg)は海馬のAP1結合能を約6倍に増強させた。さらに、同処置は大脳皮質、線条体、視床下部および橋・延髄のAP1のDNA結合能を有意に増加させたが、これらの増加はいずれも2倍以下であった。しかしながら、中枢および小脳ではNMDA投与によるAP1結合の変化は見られなかった。海馬のAP1結合能は少なくとも150mg/kgまでは用量依存的に増加したが、小脳ではいずれの用量でもAP1結合能に著変は認められなかった。抗c-Jun抗体および抗c-Fos抗体を用いたスーパーゲル移動度シフト法により、海馬のAP1には少なくともc-Jun蛋白が存在すること、およびNMDA投与によりc-Fos蛋白が増加することが判明した。-方、CREB結合能はNMDA投与により海馬のみに有意な増強が認められたが、Myc結合能はいずれの脳内部位においてもNMDA投与による変化は観察されなかった。以上の結果より、NMDAの末梢投与は海馬におけるAP1のDNA結合能を選択的に増強する可能性が示唆される。
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