ウサギ脳底動脈をコラゲナーゼで単離し、ナイスタチン法によりヒスタミン(10μM)によって惹起される膜電流を記録した。この電流は内向き電流で逆転電位は-10mV付近であった。パッチ電極内液のClイオンをMetSO4に置換し(Cl-deficient溶液)、ヒスタミンを投与すると電流は減少し、逆転電位は負側に移動した。Cl電流遮断薬のNiflumic acid (100μM)の前処置により、Histamineによって発生した内向き電流は消失した。微小電極法によって膜電位を記録すると、ウサギ脳底動脈の静止膜電位は平均52mVであった。1μMでは膜電位の著明な変化が認められなかったが、10μM Histamine投与によって膜電位は約15mV脱分極し、この脱分極はHistamine投与中(10min)は持続していた。このHistamineによる脱分極はNiflumic acid (100μM)の同時投与によって平均5mV程度減弱(再分極)し、Niflumic acidを除去すると再び脱分極した。等尺性張力記録法による高K(45mM-12mM)溶液誘発収縮に対して低濃度のNiflumic acid (10μM)は謹かに抑制したが、高濃度のNiflumic acid (100μM)は収縮傾向を示した。一方、同濃度のNiflumic acidは濃度依存的にHistamine誘発収縮を抑制した。このNiflumic acidによる抑制は3μM Nicardipine前処置によって電位依存性Caチャネルを抑制した後も認められたことから、電位依存性Caチャネルに対する抑制作用はないと結論した。また、Cl-deficient溶液による実験ではHistamine収縮はCl濃度の減少に依存して収縮の強さが減弱することがわかった。以上の結果はHistamineの投与による膜脱分極は従来考えられているように非選択的陽イオンチャネルの活性化のみではなくClチャネルも関与している可能性が高いこと、また収縮にもClチャネルの活性化が関与している可能性があることを示すと考えた。
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