研究概要 |
本研究では、筆者がこれまでの研究で見出した、エンドセリン-1(ET-1)によるET_A受容体を介した心搏抑制作用の機序解明を更に進めるため、研究対象を洞房結節に移し,電気生理学的手法を中心として心拍制御のイオン機序の解明を進めた。また、心拍制御におけるET_B受容体の役割についても、新たに解析を進めた。 (1) ET_A、ET_B両受容体が、心拍制御に関してそれぞれ、心拍抑制・増強という相反する作用を仲介するという役割分担を行っていることが、選択的拮抗薬を用いた薬理学的実験により明らかとなった。 (2) 洞房結節細胞に対するET-1の作用;ウサギ洞房結節に対し、ET-1(l nM〜)は用量依存的にpacemaker電位の傾きの減少とtake-off potentialの脱 分極方向へのシフトを起こさせ、結果として自発活動電位のcycle lengthを増大させた。この作用はET_A受容体選択的拮抗剤BQ123(1μM)により遮断された。単離ウサギ洞房結節細胞を用いた解析の結果、ET-1に対する反応には少なくとも異なる2種の反応を示す細胞群、すなわET-1により脱分極する細胞と過分極を起こす細胞とが認められた。ホールセル・クランプ法による膜電流解析の結果ET-1は前者の細胞に対しては、過分極誘発電流(I_f)を僅かに抑制し、isoproterenol存在下で強くこれを抑制、また、後者の細胞に対しては、アセチルコリン電流(I_K_<(ACh)>)を顕著に増大させることが判明した。さらに、両タイプの細胞とも、ET-1はL型カルシウム電流を顕著に抑制した。
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