研究概要 |
酸化ストレス剤でマウス腹腔マクロファージに誘導されるタンパク質をコードするcDNAを+/-法により多数選択しそれらを解析する研究を行っている。今回、A170と名付けたZn-フィンガー・PEST配列・複数のリン酸化可能部位等、調節タンパクとしての構造的特徴を持つ新しいタイプのストレス誘導タンパクを見出し報告した(B.B.R.C.226,456-460(1996))。A170タンパク質は、おだやかな酸化ストレスで特異的に誘導される(平成8年・生化・分子生物合同学会)。また、マクロファージ内にA170をリン酸化するキナーゼを見出している(平成8年・生化・分子生物合同学会)。さらにA170タンパク質がプロテアソームによって速い速度で分解されていることと、μM濃度の過酸化水素が転写誘導なしに同タンパク質を誘導することを見出し、酸化ストレスがA170タンパク質の分解を結果的に阻害する可能性を示した(平成8年・細胞生物学会、B.B.R.C.印刷中)。驚いたことに、ごく最近米国のグループがA170タンパク質と90%同一のアミノ酸配列を持つヒトリンパ球のタンパク質を、チロシンキナーゼLckのSH2ドメインやウイルス感染により誘導されるサイトカインリセプターに結合する因子としてそれぞれクローニングしたことである。このことはA170が細胞内シグナル伝達系に関与することを示唆している。
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