本研究では2種類のホスファチジルイノシトール輸送蛋白質(Pl-TPαとPl-TPβ)の発現調節を解析することによりそれらの機能の違いなどを推定することを目的とした。その結果今年度の得られた成果は次のとうりである。 1)ラット再生肝でα型とβ型の発現量をノーザン法で解析したところ両者共に再生肝手術後4時間から12時間後にmRNAの増加が見られた。しかし、両者の時間的経過には明らかな違いが見られた。 2)イン・サイトハイブリダイゼーション法でラット脳内のmRNA分布を調べるとα型は小脳皮質など限られた部位にのみ発現していたのに対して、β型は小脳、視床、視床下部、扁桃体、海馬等の殆どすべての部位に存在しており、しかも量も多く発現していた。 3)ヒトでの発現を調べたところ両者は殆どの組織中に発現していたが脳内分布では差が見られα型は視床下部、β型は扁桃体にとくに多く発現していた。またHeLa細胞ではα型よりもβ型の方が圧倒的に多く発現していた。次に種々の段階にあるヒトの大腸癌及び直腸癌の患者より摘出した組織中の両者の発現量をみると、α型/β型比は病期で進行した癌程低下する傾向が見られた。 以上の結果はラットやヒトに於ては2種類のPl-TPは異なる機能を持っていることを示唆するものであり、特にβ型は細胞増殖と関連があると推察される。
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