LTA_4水解酵素は、LTA_4水解酵素活性とアミノペプチダーゼ活性を有する多機能酵素であるが、この2つの酵素活性は、アミノペプチダーゼ活性のみがCL^-により著明に活性化されること、両酵素活性のpH依存性が異なるなど異なる酵素学的性質を示した。ロイシンチオールは両酵素活性に対してcompetitive typeの阻害をを示すが、ベスタチンはLTA_4水解酵素活性に対してnucompetitive type、アモノペプチダーゼ活性に対してcompetitive typeの阻害を示すことから、LTA_4とペプチドの酵素への結合部位が同一でないことが示唆された。酵素活性に関与するアミノ酸残基を検索することを目的に、N-アセチルイミダゾールによる酵素のアセチル化を行ったところ、2つの酵素活性共に低下し、その活性の低下はベスタチンによって阻止されること、低下した活性が中性ヒドロキシルアミン処理によって回復することから、ベスタチン結合部位近傍におけるTyrあるいはCys残基のアセチル化が酵素活性に影響すると推定された。そこで酵素のアセチル化により生じるO-acctyl-Tyrの残基数を275nmの紫外吸収値から求めたところ、ベスタチンによって1.7残基のTyrのアセチル化が阻止されることが示された。一方、DTNBによってSH基の定量を行ったところ、アセチル化酵素、非修飾酵素共に9残基のSH基が存在し、この条件でのアセチル化ではLTA_4水解酵素のCys残基は修飾されないことが判明した。従ってベスタチン結合部位近傍に存在するTyr2残基がアセチル化されることにより2つの酵素活性が低下すると考えられたが、基質結合部位との関係からこれらのTyr残基の2つの酵素活性における役割が異なることも推定された。
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