リボソーム23/28S rRNAのGTPaseドメインはペプチド鎖伸長因子依存のGTPase活性に関わるRNAドメインであるが、その機能に直接関わる構造エレメントは明らかにされていない。本研究では伸長因子(EF-G/EF-2)の作用部位となる1067位の塩基の役割について、さらに、結合するリボソームタンパク質がRNAドメインの機能構造形成に関わっているかどうか分析した。 1)GTPase活性への1067位の塩基置換の効果 原核生物EF-Gの作用部位となる大腸菌リボソーム23S rRNAの塩基1067-Aを真核生物型塩基Gに置換しEF-G及び真核生物のEF-2依存のGTPase活性への効果を解析した。この塩基置換によって、GTPase活性の阻害剤チオストレプトンや抗28S抗体の結合性に大きな変化が生じたが、GTPase活性への効果は見られず、GTPase活性への1067位の塩基自身の関与は示されなかった。 2)GTPaseドメインとリボソームタンパク質との機能的相互作用 大腸菌リボソームのGTPaseドメインに結合するタンパク質L7/L12/L10/L11を特異的に除いたコア粒子に動物リボソームのP1/P2/P0/L12タンパク質を結合させたハイブリッド(70S-P粒子)リボソームを形成することに成功した。70S-P粒子はもはや大腸菌の伸長因子EF-G依存のGTPase活性を保持せず、かわりに高い動物EF-2依存のGTPase活性を示した。また、70S-P粒子は動物細胞のEF-1α/EF-2因子依存のポリフェニルアラニン合成活性も示した。これらの活性はGTPaseドメインのRAN断片をCompetitorとして加えた場合抑制された。この結果は、リボソームタンパク質とGTPase RNAドメインの複合体構造がペプチド鎖伸長因子のアクセスに関わることを明確に示しており、リボソームタンパク質の結合によって調整、誘発されるrRNA機能構造の性質が示された。
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