研究概要 |
235nm励起紫外共鳴ラマン(UVRR)では主にチロシン(Tyr)とトリプトファン(Trp)に関する情報が得られる。ヘモグロビン(Hb)がdeoxy形(T)からCO形(R)に変わるとき、Trpでは主に強度変化が、Tyrでは波数シフトと強度変化の両方が起こった(J.Bio1.Chem.,1995)。UVRRのTyrやTrpの変化とdeoxyHBの負のCD帯の出現にはサブユニット接触面(α_1β_2)の芳香族アミノ酸の関与が考えられるので、この部位のTyrやTrpが他のアミノ酸に変異した異常Hbおよび遺伝子工学的手法による人工変異Hbを用いて測定しその影響を調べた(J.Mol.Struct.,1966)。UVRRでは蛋白中のTyr残基を浮き彫りにしてその構造変化を明らかに出来るので、シグナル伝達やがん遺伝子などに関係するチロシンキナーゼによるチロシンリン酸化をヘモグロビン研究と平行して研究対象とした(J.Raman Spectrosc.,1998)。また、今年度は特にヘモグロビンのT→R転移における構造変化をNOHbを用いて検索した。UVRRにみられる変化がリガンド結合そのものに由来するのか、真に四次構造変化に起因するのかを知る目的である。NOHbはリガンド結合の有無に関係なく、アロステリックエフエクター(IHP)の添加でT構造に変換することが知られているからである。その結果、UVRRでみている変化は真に四次構造変化を反映しているという興味ある結果を得た(現在、論文投稿中)。
|